07年4月27日から首都圏を中心としてバイオエタノール入りガソリン(バイオガソリン)が販売開始となりました。
地球温暖化の原因の一つの二酸化炭素を吸収して育つ植物から作るエタノールを燃焼しても、地球上の二酸化炭素の総量は増加しないという事で、二酸化炭素の削減に繋がる事から注目されています。
今回のバイオガソリンは「バイオETBE配合方式」となり、ガソリン+エタノールの「直接方式」ではありません。ちなみに
ETBEとは「エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル」の事で、
エタノールと
イソブテンから作る化学物質です。どうして直接方式ではないかというと、エタノールは水を吸収しやすいので品質保証が難しいからです。直接方式だとタンクローリーで輸送直前にエタノール配合する必要があるので監視の目が届きにくく、違法行為も起きやすいらしいです。
もっとも、環境省が進めたいのは直接方式の「E3方式」というバイオエタノール3%直接配合ガソリン。なのに発売開始したのはバイオETBE方式なのは、全石連がE3方式に反対しているからです。
E3反対の理由は、上記の1.水の吸収、2.違法行為、3.エタノールを直前に混ぜるためにかかる施設改造費、4.E3方式ガソリンから蒸発したガスが光化学スモッグの原因になる可能性があるから等です。
その反面、ETBE方式にも弱点があり、イソブテンは石油の生成過程の副産物らしく生産量に限界があり精製総量に問題が発生するとのこと。
さて、タイトルの?マークです。まずは
エタノール自体が発癌性物質のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドをガソリンよりも大気中に増加させてしまうことが判明している事。但し、実際の発ガン率は変わらないという試算は出ています。ガソリンだって問題はありますが、こういうデメリットの説明をちゃんとするべきだと思います。
植物由来の燃料だと化石燃料と違い二酸化炭素の新たな増加という面では押さえれます。ですが、現状はトウモロコシとサトウキビから作成するエタノールを中心に使用しているんですよね。そうなると、トウモロコシ等を生産するために大量の機械を使用します。畑、輸送、精製と各段階で大量に石油を使います。
エタノールを生産するためにそれ以上の大量の石油等の燃料を消費する可能性という問題です。
カリフォルニア大学の助教授は論文で「燃料をガソリンからエタノールに切り替えた場合、温室効果ガスの排出量は最大32%減らせるが、逆に20%増えることもあると述べている。」との事です。(
読売新聞)
さらに、
トウモロコシ畑等に関連して他の問題も発生しています。
- 育てるための肥料からCO2の数百倍の温室効果を持つ亜酸化窒素が発生する。
- 高収入になるトウモロコシ畑を作るために大規模な森林伐採が発生している。
- 他の穀物農家がトウモロコシ生産に切り替えが進んでおり、他の農産物の生産が減っている。そのため、他の農産物の価格高騰が急速に起きている。
- 切り替え化が進み、トウモロコシは高価格で買い取られるようになるため家畜飼料も高くなり、肉類の価格高騰が起きている。
- メキシコではトウモロコシが安く買えず、伝統的な主食のトルティージャやタコスが値上げされており、既に1月に数万人規模のデモが発生していて暴動に繋がる可能性も出ている。
- 貧民国への援助に回していたトウモロコシがなくなる。
並べてみると、かなり問題が発生していますね。
1と2の問題では逆に地球温暖化を推し進める原因となっています。実際には環境問題を悪化させるのでは?と恐くなります。
3等は日本でも既に影響しており、例えばオレンジジュースの果汁原料も2年前の倍の値段になっている(TVニュースで見たうろ覚えなので間違っていたらゴメンナサイ)とかで、5月1日から「ミニッツ メイド」等は1リットル当たり20円の値上げをします。
5も日本人からすればご飯が食べづらくなるのと同じですから。「どうせ米なんて食べないし」というのは簡単ですが、3でも書いている通り、他の穀物にも影響しますから小麦が減ればパンや麺類もいずれは同じ運命です。
他にも、サトウキビの砂糖の高騰で和菓子屋が閉店に追い込まれた例もあります。あ、ちなみに日本の砂糖はサトウキビからではなく、北海道中心の
てん菜(ビート)という大根ぽい植物から作るのが主流です。知ってました?(半年前に知って言いふらしたかったんです)
化石燃料の削減という意味では大きな意味がありますが、温暖化問題としては思った以上に疑問符が出てきました。
そして
ETBE自体にも問題があり、実は毒性があり人体にも影響が出る可能性があるという事で研究中なのです。似たような化学物質のMTBEを米国で使っていたところ、事故で漏れて地下水が汚染されて飲料不可になったという事があります。
環境省の「
ETBEについて(PDF)」
- 米国環境保護庁(EPA)の諮問機関の報告では、研究事例もMTBEより少ないことから、“ETBE 等のエーテル類の利用を拡大する際には、健康への影響や地下水中での特性について研究を進めることを推奨する”とされている。
- オーストラリアではETBE の毒性に関する知見が十分でないとして、ガソリンへのETBE の添加を禁止している。
製薬問題と同じく、化学物質としてよくわからない状況なのに使うというのは、果たしていいのでしょうか? 禁止国もあるのに、もっと研究してから行うべきでは??また、
バイオガソリンは「レギュラーガソリン」の代替品であり、欧州外車と高級車で多いハイオク車にはこれまで通りハイオクガソリンを入れてくださいという事。最近の日本車はハイオク車が多いのに・・・。元々バイオガソリンはオクタン値という耐異常燃焼値が高いらしい(文献なし)のですが、何故なの?と思いました。
理由はわかりませんでしたが、気になったのはテレビで「毒性の問題から研究が必要だから」と言っていました。上記の毒性問題の話でしょうか? もし、そんな事が理由なら、最初からレギュラーも研究してから販売してください。
ちなみに欧州車全てがハイオクなのは、オクタン価が日本のレギュラーは89以上で欧州のレギュラーは94以上と高いため、日本のハイオクの96以上じゃないと満たせないためです。
他にも、アルコール系燃料はゴム類やエンジンのアルミ製部品などに影響が出て車輌故障や炎上すると言うことで、昔、
ガイアックスという高濃度アルコール燃料を販売していた会社が潰されたのですが・・・。その時はオデッセイが炎上した事がありました。それなのに低濃度とはいえ、環境省等はその時は
環境問題を含めて注意喚起をして起きながら、今は何も言わずに使用を勧めるというのも、私からすると気に食わないというのがあります。
今回は車好きの私としては、結構興味があり、それなりに期待していたのですが・・・真面目に影響を考えて、さらに調べてみると色々と出てくるものですね。
もっとも
バイオガソリン自体が悪いと全否定するつもりはなく、あくまでも現状の話です。エタノール自体は植物のセルロースがあれば出来るはずなので、雑草や廃材からも作ることは可能で研究もされています。問題はあくまでも採算ベースにのる生産効率ですから。
今回も長くなりました。。。記事数が減っても私自身がある程度納得のいく記事を書くべきか、簡単に書いてもっとコンピュータ系の記事を書くべきか・・・悩みますね。